目が覚めたのは、奇跡だったらしい。
ここが何処なのかすら、目が覚めた時には判らなかった。
体中ボロボロで、あちこち痛くて、泣きたくなった。
怖かった。でも、生きてる。何でだ?
覚えている感覚は、大地に寝ていたはずなのに、重力に逆らっていた。
そしてゆっくりと、一定のリズムを保って揺れが来た。
もう、目も開けていられなかった。
「目が覚めたか?」
「嗚呼、どうも悪い夢を見ていたみたいだ」
「・・・悪いな、お前に良い知らせを伝える事が出来なくて」
そう言った同胞は、自分に刑を告げてくれた唯一の面会人だ。
そして自分の最期を見届けるのも彼なのだろう。
何故かそんな気がしていた。
自分が何故生きているのかは知らない。だけど何となく判っていた。
『許さない国』
「どう言う事です!!あれは事故でしょう??」
「そうは言ってもな、現に人1人が命を落としているんだ」
「そうだ、彼を助けるために、な」
「しかも、致命傷となった傷は彼が馬から落とした所為だと言うじゃないか」
「あいつは必死で護ろうとしただけですよ?!」
「だが、その所為で人が死んだ」
「その罪は重かろう」
「・・・相手が勝手に落ちただけですよ?それでも罪に問うと仰られるのですか!」
「無論、相手が馬上から転落さえしなければ、彼の罪は無かっただろう」
「そうですな。何しろ致命傷となった傷を負ったのはその時ですから」
「しかし!!」
「あの男は彼が馬にしがみ付いた所為で落馬し、大怪我を負った。
尚且つ負傷した彼を助けるために尽力した所為で大幅に体力を削ったのだ」
「彼を見捨てて自軍に帰っておれば、助かったかも知れぬのに、な」
「そんな『かも知れない』程度で彼を咎人にするのですか!」
「「・・・・・・・・・」」
「あの男が命を賭して助けた命を、
そしてこの国でも治療に当たった者達の必死の想いは、
あなた方には届かないのですか!!!」
「どちらにせよ、彼の罪は重い」
「相手が彼を許しておろうが、我国は許さぬ。人一人の命を奪ったのだからな」
「すみません、お母さん」
「やはり、そういう結果になったのですね」
「上は、こんなケース初めてだといって、二つに割れていたのですがね」
「あの子にはいつ?」
「今日、この帰りに。どうか気を落とさないでください」
「お心遣い有難う。でも、息子を失うと判って、気を落とさない母親はいないわ」
「では、失礼致します」
「君の刑が決まった。明日、裁判所へ出向くように、だってさ」
正直、この事を言うのは気まずかった。
それでも、それを察している筈の彼は、どこか、すっきりとした表情だった。
「ああ、何となく、そんな感じはしていた」
「何故、怒らないんだ?」
「多分、そうだろうな、とは思っていたから。覚悟は出来てるよ。
―――俺は、人を死に至らしめてしまったのだから」
その言葉に胸が詰る。涙は見せてはならない。
思考をかき混ぜて、深呼吸を繰り返す。嗚呼、何と無力な事か。
「俺は、頭の堅い頑固ジジィ達に腹が立ってたまらない。
相手はお前を許していたのに、それは歴然としていたのに」
色んな思いが、頭を混乱させる。ダメだ、もうここには・・・
「お前は自分を責めるなよ。全て覚悟していたから」
「・・・それじゃ」
「・・・なぁ!!」
扉を開いて出て行こうとすれば呼び止められて。
そっと後ろを振り返れば、どこか、少し迷いのある瞳がそこには在った。
「お前とは・・・あの男は・・・」
「俺が見届け人さ。皮肉なもんだな。その時に、時間が貰える」
もう会えないのか、そう問い掛ける瞳に、安心しろと投げ返す。
不本意だ。大事な友人をこんな形で失うなんて。
許せない。何でこんな事になってしまったのか。
ただ病室の扉を閉めて、その前で蹲る。
見届ける時に、あいつには事実と真実を話してやろう。
俺の気持ちの全てを教えてやろう。
あいつはどんな表情をするだろうか。
『ああ、そうだったのか・・・』
『でもまぁ、俺が死ぬ事に変わりは無いがな』
そう言った友人の死を、俺は忘れない。
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会話ばかりですみません。
この間の補足みたいなものです。
この国は、変わっていくのかな。どうなんだろう。
設定も何も考えずに書いちゃった話なので
いまいち良く判っていません。(阿呆)
痛い話ですみません。
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