俺はどっちでも構わない。
 お前が誰を思っていようが誰を思ってそれを奏でていようが。
 そんなの俺の知ったこっちゃない。
 ただ、お前と音を重ねるこの瞬間さえあれば―――
 
 
 
「土浦君」
 
 日野が待ってました! とでも言いたげにこちらに歩み寄ってくる。

「あぁ、悪い。待たせたか?」

「ううん、全然♪ さ、始めようか♪」

 練習室。2人きりの部屋。
 コンクールが始まるまで、1年もこの学院に通っていたって言うのに
 ここを使うのは、日野と練習する時だけだ。
 家は防音完備だから、誰に気兼ねすることなく弾ける。
 そう、俺はサッカー部での練習の傍ら
 ピアノを弾くことも怠っては居なかった。
 
 普通科で、サッカー部で、それでも俺はピアノを止めなかった。
 ただ弾けるだけでよかった。
 自分の演奏が他人に評価されようがされまいがどうでもいいことだった。
 はっきり言って、リリに無理やり参加させられるまでは
 コンクールなんぞに興味はなかった。
 
 ただ、たまたま日野が参加者に選ばれて
 日野の伴奏者が、出てこなかっただけ。
 日野が弾くのは『別れの曲』だと知っていた。
 俺の好きな曲だ。
 俺は壇上に上がり、いつも通り指をほぐすと
 日野に合図を送る。
 あいつは俺の伴奏にしっかりと答えてくれた。

 いつか南楽器に突然現れた日野に驚いて、脅したこともあったが
 それがなかったら今の俺は居ない。
 ショパンといえばピアノだろ?
 それなのにあいつは、ヴァイオリンで弾いた。
 思っても見なかった。こんなに楽しいと感じるようになるなんて。

 ピアノの蓋を開け、準備を整えると、日野に訊く。

「で? 今日は何を弾くんだ?」

 最近はアンサンブルの練習が多くて
 こいつのレパートリーは目に見えて増えていて
 俺が参加する曲数も多かった。

「んーと、久しぶりに流浪の民、なんてどう?」

 俺は面食らった。
 それは結構簡単な域に入る楽曲で
 何せ、初めてこいつとアンサンブルを組むことになった曲だ。
 俺と火原先輩と冬海と日野。
 日野は最初のコンサートまでに随分弾き込んで
 もうとっくにマスターして、練習は必要ないはずだ。

「はは、今更、流浪の民、か? 逆に懐かしいな」

「んー、それとも、セレナーデが良いかなぁ?」

 セレナーデ・・・
 俺が隠れてこっそりお前を想って弾いてるのを知ってるのか?
 恋人を想って、恋人を呼び続ける曲・・・
 恥ずかしげもなく、躊躇することなく
 ただひたすら恋人を呼び続ける曲・・・
 まぁ、そのくらいしないと伝わらないものかもな、なんて
 そんな風にも思えてくる。

「んじゃ、セレナーデで決定。よし、始めるか」

 その言葉に日野はヴァイオリンを構える。
 静かに旋律を奏で始める。
 音が重なる・・・
 俺は口元が緩くなる。
 1人じゃ味わえない感覚。
 それを教えてくれたのもこいつだ。
 セレナーデの曲に合わせて、俺の想いも、お前に届くか?

 静かに最後の一音まで大切に弾き切る。
 少しの沈黙の後、日野がため息を吐く。

「まぁ、こんなもんだろ」

「うん、でさぁ、土浦君・・・」

「なんだ?」

 その後、日野が言った言葉に俺は口ごもる。

「音楽科に引けを取らない、って言ったのは俺たちの演奏技術が、ちゃんと音楽に合ってるから言ったまでだ。しかし、加地のやつ、あれだけ弾けるのにどうして・・・」

 日野が今日俺を練習に誘った理由。
 加地と俺があの日から険悪状態だからだ。
 あれからあの曲のアンサンブル練習はしていない。
 はぁ・・・何か判った気がしたよ。
 お前はコンサートの成功が目標なんだな?

 じゃぁ、俺は、それに協力してやるしかないじゃないか。

 気に食わないが、加地と、話し合ってみるか・・・。
 
 その代わり、コンサートが成功したら・・・
 
 
 
 
 
+++++++++++++++++++++++
 
 
はい、土浦バージョンです。
ネタがないのに無理やり書いたので微妙に短いです。
漫画とゲームの2設定。
微妙に金やんバージョンと繋がってます。

しかし香穂ちゃん、先に土浦と練習するとは・・・
加地は同じクラスでしかも隣の席だから誘いやすいはずなのに。
きっと、どっちにするか迷った挙句
携帯で呼び出したんだ。うん。
 
何で練習室かというと
だって、屋上にも森の広場にもピアノ持ってけないじゃん!
ってことで。
冬海ちゃんのイベントでもピアノじゃなくキーボードを
持って行ったくせに
何で2人練習の時にはグランドピアノで・・・
とっても不思議です。もし持ち運んでるんだとしたら
土浦はよっぽどの力持ちなのでしょう。(苦笑)
 
 
しかし、セレナーデを弾いてるのを見つかった時の土浦の反応って
わざわざ曲の説明までしてくれるし
連弾に誘われた時よりも「いい加減気づいてくれ」オーラが
出ていたような気がするのは気のせいですか?
 
 
 
ってか、土浦はピアノ止めて指揮者目指すのかなぁ。
それともピアノは続けながら指揮者の勉強もするのかなぁ。
音楽科への編入ももう心に決めてたみたいだし
てーか、あの制服似合うのか?
まぁ、火原みたいに中はT-shirtって事にしてもいいけど。
あの制服着るの嫌がってたじゃん。
あのスカーフみたいなタイが嫌だ、って。
 
 
伊藤健太郎さんを思い出しながら土浦の台詞を聞くと
恋次が・・・!! と無性に握り拳でわなわなしたくなるのですが
・・・音楽関係なく、恋次ってこういう想いしてないか?
ルキアに対して。
 
 
だってキャラソンで
『I’m standing to defend you〜
 いつもいつでも〜
 俺の背中を お前の盾に〜』って歌ってるくらいだから
つまり、ルキアを抱きしめる感じで守ってるのか?
 
 
雛森ちゃんは
『いつもあなたの一歩手前を守って居たいから〜』
つまり隊長には背を向けて敵と対峙してる、って事だよね?
藍染隊長、こんなにも想われてたのに
なんで、なんで、・・・・!!!
 
 
 
微妙にBLEACHの話も入りましたが
取りとめもなく土浦、でした。
 
 
 

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