酷い有様だ。
心の中でそう呟いて辺りを見渡す。
穢れた土地には何も生えては来ないというが、これはあんまりだろう。
先の戦禍のあとが生々しく残るこの地に、仲間たちも目を伏せている。
「ねぇ、やっぱり・・・」
そんな声が後ろから聴こえてきた。
ふと後ろを振り返ると、女性同士仲がいいのか、それでも異種族で時々諍いのある2人が
地面に視線を落としたまま話し合っていた。
「なぜこんなことになったの」
「皆この国の民なのでしょう?」
「酷すぎる」
「反乱が在ったとも聴かなかったし」
「やっぱり、あの方が治めてくれなければ・・・」
「私たち、一体どうなっていたのかしら」
この国出身である2人は、今でこそ自分の旅の一行に加わってはいるが
その前までは、この国を護るために尽力してきた人たちだ。
戦を知っている、生の体験として知っている彼女たちは、自分たちの中でも知識が豊富だ。
彼女達の役割は語部。先の戦争を、その被害を風化させないために語り継いでいく者。
ふとした場面で彼女たちの会話は、訪れた町の人々の心に染み渡る。
経験者だから語れる言葉。
先の戦争から、もう大分経つというのに、この場所は未だ穢れたまま。
草一本生えていない枯れたその場所に、目頭が熱くなる。
この場所にも、ここで生き、ここで暮らし、ここで笑い、ここで育った人たちがいた。
それを奪った、戦争が、にくい。
故郷を奪われた哀しみは、自分にもよく理解できるから。
「それでも」
視線を前に戻した彼女たちはまっすぐと村があった場所をみつめる。
それに倣って自分も前を見た。
「憎む相手に報復してもまた憎しみが生まれるだけ」
「憎むべきはひとじゃない。戦争から何も学ばない自分自身の心」
彼女たちの言葉が、すぅっと胸の中に入ってくる。
ひとりひとりが、戦争から学べば、相手を思いやる心を持っていれば
誰も哀しむことのない世界が訪れるだろうか。
ただ祈ろう。今は亡き、村人のため。そして亡き国民のため。
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