待ち侘びたクリスマスコンサートの日。
正直云って、わくわくしていさえいる自分に驚いている。
今までひたすら淡々と音楽を愛してきたけれど
この高揚感は味わったことが無い。
否、確かに今まで開いたコンサートも楽しくなかったといえば嘘になる。
いつも君の音を傍で聴いて、段々と良くなっていくのが自分のことのように嬉しくて
2人で合わせる時をいつも楽しみにしていたのだけれど。
このコンサートが終われば、それもなくなるのか、と想うと
少し寂しさもこみ上げる。
だがきっと、君はこのまま音楽の道を進んでくれると信じている。
俺と君が、音楽を続けていれば、この関係は壊れることは無い。
同じ学年だから、きっと入学式や他の式典では会っていたのだろうが
君を君として認識した春のコンクール―――――――
正直、ファータたちの力で参加している君は不真面目だとさえ想ったが
君の努力は本物だった。
君は音色に想いを乗せ、ファータの力を借りずともヴァイオリンを唄わせるようになった。
現に今持っているのは何の魔法もかかっていない普通のヴァイオリン。
それを今までのコンサートから観ても判る通りに響かせ唄わせているのは君自身。
誰の力でもない、君の努力の成果だ。
確かに君は他の人間よりもファータに愛されているかもしれないが
それ以上に君の向上心の高さには敬服している。
始めた頃はすぐに身体が強張っていただろうに
それくらいヴァイオリンの構えは普通と違う。
それなのに今は疲れを知らないほど、毎日練習をこなしているのを知っている。
俺は君をライバルだと、そしてよきパートナーだと想う。
競い合う相手がいるのは良いことだ。
それ以上に支えてくれる相手がいてくれることは大切だと、最近想い始めた。
音楽とは孤独なものだと想っていた。
それでもこうして君と、他の人たちとアンサンブルをしていると
自分以外の音と自分の音を重ねる、ということを経験していると
他者の存在を認めざるを得ないことに気がつく。
それはすべて、君のおかげだ。
この気持ちをどう表現していいのか判らない。
この胸に芽生えた暖かさを―――――――――
「おーい月森、そろそろお前さんも出番だぞ」
「行きましょう、月森先輩」
「金澤先生、志水君・・・はい、今行きます」
君が例え誰を選んでいようとも構わない。
今君への想いをヴァイオリンの音色に乗せて―――――――――――
紅紫の薔薇か・・・・
きっと柚木先輩辺りが用意したのだろう。
俺は君に何を贈ろうか、正直迷ったんだが
やはり君には水色の何かをつけていて欲しかったから
小さいけれど綺麗な水色の石が嵌ったネックレスを見つけたから
思わず君に似合うだろうと想って購入してしまった。
きっとこれを人は衝動買い、とでも云うのだろうな。
色んなひとが君を見て、君の演奏を楽しみにして、そしてお疲れ様、と声をかけて。
そしてささやかな褒美を残していく中、俺だけ少し浮いているだろうか。
だがしかし、他のひとが君に何を贈ろうが構わない。
俺は、俺だから。俺の気持ちからのものだから。
「あ、月森君、こんなとこにいた」
「日野・・・」
「外すごいクリスマスツリーだね」
「え、あぁ、そうなのか?」
「あれ? 見てない?」
「あぁ・・・・・・」
「それじゃ打ち上げ終わったら皆で見に行こうか。どうせホールの前だし」
「・・・・・・それも良いかもしれないな」
皆が呼んでるよ、と日野は俺の手を取って打ち上げ会場へと行く。
無事にコンサートも成功した。
これで学院も音楽科と普通科が分かたれることは無い。
それが嬉しいだなんて、君ともう少し一緒に過ごせることがこんなにも嬉しいだなんて。
帰りに見たツリーは本当に大きくて、他の皆も歓声を上げていた。
ウィーンに行くのが、少し寂しいだなんて、今の俺に云う資格はない。
粉雪が舞い始め、本格的なホワイトクリスマスだ。
例えこの思いが君に届かなくとも、言葉で伝えることができなくとも
君と繋がる音楽があれば、俺はそれで―――――――――――
日野、いつか君と2人で肩を並べて
ヴァイオリンを奏でられる日が来ることを願おう。
俺はそれで満足だ。
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お題:『粉雪』『伝える』『紅紫色』
お題提供:たんぽぽ様
・・・・・・ついにやってしまった。
月森君の独白SSS・・・・・・・・
特に何を考えたわけでも何を妄想したわけでもないんだが
いい加減うるさいので書きました。
日野が日野がとあの日以来煩いので
しかも愛情駄々漏れ状態なのが痛いので
糖度は抑えましたが、消えてくれるかな・・・脳内月森くん。
今邪念は捨てなきゃいけないんだ。
だってもうすぐ色々在るし。
だからとりあえず祓っておこうと想って。(厄災か)
ちなみにクリスマスコンサートで月森君選ばれなかったみたいですね。
香穂ちゃんは誰の呼び出しに答えた後だったんでしょう♪
(悲恋好き)
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