ひらり、ひらりと舞い落ちる花弁を、その軌跡を追うようにして空を見上げた。
 風向きは東南。自分が歩いている方向とは逆の方向へと首をめぐらせた青年は、そこに広がっている景色にほうっとため息をついた。

「これはまた季節外れだな」

 舞い落ちる梅の花は、もう時期としてはとっくに過ぎていて。
 紅梅が既に落ち切っている中で、白梅だけが未だに枝に居座り続けていた。

 季節は春。
 時期としてはもう桜が咲き始めていい頃だ。
 時期もあるが気温としても、芽吹きには丁度いい頃合だろう。
 どこかに桜は植わってないものか、と右へ左へと視線を動かすが、それらしき樹は無い。
 梅は季節はずれだというのに、高まで神々しく咲き誇られては、それもまた良いか、と想ってしまう。

 桜の花弁がピンク色なのは、その木の下に死体が埋まっているからだ、と何かで聴いたことがある。
 そんな馬鹿な話があるものか、とさえ想うが、何故こんな話を思い出したのかさえ思い出せない。
 自由にならない思考回路の奥の方で、何かが聴こえた。

「・・・・・・?」

 聴き間違いだろうか。
 青年はそう想って、もう一度辺りを見回す。
 
『おんしの血は美味そうじゃの』

コメント

nophoto
たんぽぽ
2009年4月25日0:20

桜が咲く時期に咲き誇っている
季節はずれの白梅

青年と始祖様・・ですね。
続きを楽しみにしてます。
k

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