海梨さんは、書くことが好き。というよりも、喋ることが苦手。
会話をすると、大体認知にずれが起きると
ずれてるな、なんかおかしいなって思った瞬間が、大概ワンテンポもつーテンポも遅い。
話し言葉は次々に消えていくから、相手も自分の言った意図と違うように受け取られていても
『そんなことは云ってない』と云われてしまう。
いや、でも、確かにちゃんと、そう受け取られても仕方ないような言いかたしたんだ。
それを云うと、大概、相手の気分を損ねてしまうのを知っているから
海梨さんは、自分の認識と、相手の理解がずれているとき
どのタイミングで『訂正』を入れて良いのか、さっぱり解らなくなってしまう。
それを考えているうちにも相手の話は進んでいくわけで
結局、海梨さんは誤解されたまま、話が終結することもままある。
話の展開が速い人と話すときは、特にそういった傾向が見受けられる。
だから、お互いの認知のズレが起こらないように、文面化した方が
一方的に、これはこういうことだ、という解釈が入らなくて齟齬がおきにくいと思ってしまう。
一旦文章化したものを相手に見せれば、あぁ、こういうことを思っているんだ
こういうことを伝えたいんだ、ということを明確に相手に伝えることができて
話し出すキッカケのタイミングを自分で計らなくて良い、というのも利点の一つ。
海梨さんはおしゃべりが苦手。
特に意味のないおしゃべりが苦手。
なんだろう、事務的な話、興味の幅が狭い中でも一致した趣味の話なら楽しめる。
事務的話は、とんとん拍子で進めば、それはそれは達成感があって心地いい。
ただ、挫折も付いて回るから、要注意なんだけれど。
そんなこんなで、話すことが苦手な海梨さんは
極端な方向で、書くことがとても好き。
それは、自分の考えを書くことであり、暴走しがちな妄想思考回路の捌け口。
ただ、書くだけ書いて、あまり整理整頓されないのが難点だったりする。
海梨さんが書くときは、あまり主題を設けない。
ただ、書くことが中心となる。
だいありなんか書いてたら、殆ど萌えのはけ口だし
ツイッターの呟きなんか見てたら、殆ど実況中継型だし
海梨さんが何かを書こう、として書くときは、大体創作するとき。
誰かに捧げ物をするとき、お題を頂いたときは、正面切ってテキスト文書と向き合う。
ただ、自分の頭の中の妄想話を書き殴るときは、特に力を入れない。
単純に、キャラクターが暴走をした結果を書き付けているに過ぎない。
手書きじゃ到底追いつけないので、ネタが降ってきたときにはPC起動が重要だ。
こうしたネタが細々と積み重なる中で、捧げ物にするものや
お題の元の元の元ネタなんかが出来上がることがある。
今までだいありに既出で出てきているオリジナルキャラクターなんかは
ほぼ、昔に作ったオリキャラを少し改変して使っている子達だし。
ネタは、突然降ってくる時が多い。
しかも、物語冒頭部分、とか中盤とか、ラストとか、こんなシーンが書きたい!状態で降ってくる。
そこまでやそれからの展開を書くのが結構大変だったりするから
ネタとして保存しておいて、連載を書いている最中に、使う子も多い。
ただ、そのままではシリーズの趣旨に沿わないことも多々あるので、要素だけ取り入れて。
そうすると、ネタの半分は使ったけど、残り半分が残ることがある。
そこは、また他の話に使ったり、と色々と使い道がある。
勿論、本当に面白くない、と思ったものはボツネタにするけれど
ちょっとでも、脇エピソードで使えそうだ、と思ったものは、とって置くので
現在、海梨さんのデータが凄いことになっている。
そろそろデータ容量の多いUSBメモリに変えねば、満タンになってしまう。
考えていること、をまとめている、というか
いま、自分の思っていること、というのを認知するのが、とても苦手。
いま、自分はどう思ってる? と問いかけて、答が出てくるのが3日後とかザラにある。
アニメ感想とかは、そのままフィーバーして書けるんだけど
普段、直に人と接する機会が少ないからか、稚維ちゃんはどう思う? に対して弱い。
否、弱い、というよりも、本音を出すのが怖くて、思考回路が停止する。
声にするのも苦手意識があるし、感じ方が人と違う、っていうのも認識しているから
自分の感じ方を『おかしい』と否定されるのが、凄く恐怖なのだ。
感じたままを云って『えー、うそだー』とか云われるのが、凄く怖い。
『そんなの感じるわけないよー』『絶対無い』とかって否定されるのが怖い。
多分、通学路で排気ガスで気持ち悪くなって吐くのを否定された経験が根強い。
海梨さんの身体は、人とは違う反応を引き起こしてしまうから
感じ方や反応も、きっと一般の人とは違うものになってしまうんだろう。
例えば、海梨さんはお風呂が凄く嫌い。シャワーでもダメ。
殆どの人が、リラックスにお風呂をあげてくれるが、海梨さんは申し訳ないがダメなんだ。
湿度が高いと、肺に十分な酸素を取り込めなくて、呼吸が苦しくなる。
梅雨の時期もそうだが、風呂場はとても苦手な場所。
露天風呂なら結構時間入ってられるんだけれど、普通の風呂では無理。
肺活量は、病院で測ったら、人並みにあるので問題はないんだろう。
だけど、肺から酸素がうまく取り込めないらしい、というのが個人的な感想。
肺の中に、水分が満たされる感じで、正直いって、歓迎できない。
と、いうのも、海梨さん入院生活が長かった所為で
1週間、ホットタオルで身体拭くだけ、っていう生活を続けてたことがある。
髪は、週に1度看護師さんが洗ってくれた。
家にいてもほぼ毎日体調が悪いので、お風呂に入る体力もなかったのも事実だ。
そんなこんなで、別にお風呂に入らなくても人間死ぬわけではない、というのを学習してしまった。
だけど、社会に出たら、たぶん、この思考回路は通用しないんだろうな、とは思う。
清潔に保つことが、マナーなんだろうな、と。
海梨さんは、年一度の眼科検診に毎年引っかかていた。
理由は簡単。アレルギー性結膜炎だから。
眼科に行っても、点眼薬出してもらって、アレルギー性結膜炎です、って云う紙を渡されて終わり。
なのに、毎年引っかかる。それが解せなかった。
眼科検診の先生に、検診の日アレルギー性結膜炎です、って云っても、信じてもらえない。
結局要検査の紙を渡され、眼科を受診せねばならず、毎年同じやり取りをする。
多分、今でも引っかかる。アレルギー性結膜炎だと明白なのに、何故に眼科に行かねばならん。
他の病気が隠れているかもしれないから、ということなのだろうが
結果が毎年同じなのに、どうしてそれを考慮に入れてくれないんだろうか。
海梨さんのアレルギーは喘息もある。
だから、風邪を引いて受診したら、必ずといって良いほど吸入が付いてくる。
お姉ちゃんに、私の方がしんどいのに、何でいつも稚維の方が重症って云われるの、と云われてた。
それほどにも海梨さんは病院と仲良しだった。
正直、しんどいのが普通になりすぎて、“しんどい”と感じたときには手遅れなんだが。
そういう意味ではお姉ちゃんは“しんどい”慣れしてない普通の子だったんだろう。
病的にみて、海梨さんのほうが重症でも、精神的にはお姉ちゃんのほうがつらかったかもしれない。
肺炎になった時は、『何でもっと早く連れてこなかったんですか』と云われてたし。
いつもの症状だったよ。ただ、熱が出てるのに気づかなかっただけで。
吐くのはいつも。咳くのもいつも。喘息の吸入嫌いだから家で寝てれば治ると思ってた。
海梨さんは、本当に、書くのが大好きで。
話し言葉になると、つっかえつっかえで、頭真っ白になることも
こうして冷静に書くことができるのは、とても大切。
だから、これは、絶対に、自我形成とは違う。
これは、ただの精神安定。
作文何本書けば外に出て行ける自我が形成されるとか云う話はあてにならない。
それなら、海梨さんは、とっくの昔に話せるようになっているはずだから。
それなら、海梨さんには、何が有効だろう?
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