ここはどこだろうか。
気が付くとあなたは真白な四角い部屋の中にいるだろう。
部屋の中を見渡しても、特に目ぼしいものはない。
きょろきょろと左右に首を振っても、そこにあるのは真っ白な空間だけだ。
床に触れるとひんやりと冷たさを感じる材質であると分かる。
叩いてみれば硬質な音がするだろう。
部屋の端まで15歩程度といったところだろうか。
寝間着で眠っていたはずなのに、普通に外に出かけられる姿になっている。
あなたは唐突に気が付くだろう。これは夢だと。
耳を欹てれば、微かに空調が効いている音がする。
暑さ寒さも感じない、快適な温度に保たれている。
壁伝いに移動をしてみるが、扉はない。
ふと見上げれば、天井にはライトらしきものはない。
それなのにもかかわらず、適度な光量を保っている。
なんの技術かは知らないが、そのことに気づくだろう。
壁をよくよく観察すると、足元近くに小さな凹みがあることに気が付いた。
近寄ってよく見てみれば、それは日本語ではないことがわかる。

"Your way to go home is inside the ceiling."

あなたは乏しい英語の知識を振り絞り、その意味を理解するだろう。
だがしかし、改めて頭上を見上げても、なにも見つからない。
他に何かないかと探すと、先程凹みがあった場所と丁度反対側の壁にまたもうひとつ凹みがあった。

"All you need to do is push the right button with your foot."

またも乏しい英語力で読み上げると、己の足を見つめるだろう。
壁ではなく床を丹念に見てみると、視線をほぼ床と水平にすることで色が変わっている箇所があることに気が付くだろう。
あなたはその場所まで行くと、その場所を勢いよく足で踏みつけた。
するとどこからかガションという音がしたかと思うと、天井から梯子が降りてくる。
あなたはそれに掴ると、そろそろと上に上がり始める。
登り切った先で見たものは、それまでの白い箱のような部屋ではなかった。
どこかで見たような、それとも違うような植物が植えてある。
それをガラス越しに室内から見ている。
植物が植えられた空間はこちら側よりも光量が多く、自然光を髣髴とさせる。
窓辺には白いカーテンが風に揺れている。
これまで空気の流れを感じていなかったあなたは意外に思うだろう。
先程まで誰かここにいたのだろうか。窓辺にあるテーブルには真っ白なティーポットがあり、カップには湯気が立っている。
近づいて中を確認してみると、それはなんらかのハーブで淹れられた茶であることがわかるだろう。
香りで苦味が強いことがわかる。
テーブルの上には小さな白い紙にこう書かれていた。

"Please feel free to drink as it is"

あなたはそれを見てどうするか考えるでしょう。
近くには白濁色の液体、白い粒の固体、そしてスプーンが添えられています。
スプーンはどうやら銀でできているということがあなたには理解できるでしょう。
銀のスプーンを入れてハーブティーの中をかき混ぜてみると、特に変化は見られないようです。

あなたはカップを手に取り、口を付けます。
何も要れず、何も加えずそのままの状態で液体を口に含みます。
それは予想通りとても苦い味がするでしょう。
遠ざかる意識の中、あなたは何かの声を聴きます。


(最後にはそうするしかないんだよ)


あなたはいつものベッドの上で目が覚めるでしょう。
先程までの体験は、なぜか普通の夢とは違う感じがします。
それでもその違和感が何なのか、よくわからないまま仕事に行く準備をするでしょう。
喉の奥に、苦味を抱えたまま。





===============


お題:「そのままで」「ハーブティ」「揺れる」
お題提供:たんぽぽ様

TRPG風に仕上げてみました。



コメント

nophoto
たんぽぽ
2016年8月11日14:57

お題で、早速書いてくださって、ありがとうございます。

とても不思議な感じですね。
翻訳した文章のような感じもして・・・。

TRPG風なのですね。

映像をみているような感覚で
読み進めていきました。

改めて
文章から、
色や感触や音や匂い、味を
想像する楽しさを味わいました。

ありがとうございました。


k
2016年8月12日20:37

読んでくださりありがとうございます。
ふふふ、テーブルトークRPGのシナリオ風にかきあげてみました。
とはいっても実際には選択肢は色々とあるので、すでにひとつを選び取っている体です。
床を調べる、とか壁を調べる、とか、匂いを嗅ぐ、とか
そういった行動を起こしていって話を進めていくゲームなのです。
今回は脱出ゲーム、といった感じでしょうか。
サイコロを振って成功不成功を決めたりするので
英語がわかるかは、そのダイスの数値に寄って決まるんです。
ヒントが見つかるかどうかも、ダイス次第です。
なかなか面白いです。

色んな文体を書いてみるという行為自体が楽しみなので
それを楽しんでいただける、というのは倖せだなと感じます。
またよろしくお願いします。
k

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